2019年12月26日

2019コンサドーレアドベントカレンダー「北海道とともに、世界へ(前編)」

 「ユースネタ」じゃない。残念。かと言ってトップのネタでもない。

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 アマチュア最高峰の全国リーグであるJFLへの昇格をかけた「地域リーグ決勝大会」(正確な大会名は違うが今年もこれで通す)が今年も11月に開催された。
 出場は全国の地域リーグの上位12チーム。出場資格は面倒なレギュレーションがあるが各自調べるがよろし。これを3つのグループに分けた1次ラウンドが11月8日(金)から10日(日)まで情け容赦のない地獄の3連戦で行われ、その上位4チームが晴れて決勝ラウンドに駒を進めた。
 今回のコラムはその決勝ラウンドの2節と3節。今年の春に完全再開されたJヴィレッジスタジアムが舞台だ。

 よりによってこの4チームに、コンサドーレのアカデミー出身の選手が1人づつ在籍している。なぜか全員登録はDF。

 いわきFC(東北)    / 5按田 頼(コンサドーレ札幌U−18出身)
 高知ユナイテッド(四国) / 5中山和弥(コンサドーレ札幌U−18出身)
 おこしやす京都(関西)  / 4内田錬平(コンサドーレ旭川U−15出身)
 福井ユナイテッド(北信越)/ 6鶴野太貴(コンサドーレ札幌U−18出身)

 …やっぱユースネタやろお?

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 11月20日(水)。決勝ラウンドは開幕する。初日は「地元」開催の東北代表いわきFCが四国リーグを全勝で駆け抜けた高知ユナイテッドSCを破り、関西の覇者おこしやす京都ACが北信越の福井ユナイテッドFCを降した。

 で、本編はここから。2回寝て2回起きた22日(金)の朝。実際にひぐまさんもJ村に後ろ足を運んだ。
 昨年から中1日休養日を置くめっちゃやさしいでしょううっふんなレギュレーションで行われる決勝ラウンド。第2節の対戦はまずいわきFC対おこしやす京都。すでに勝ち点3づつを挙げている同士。お客さんの間からも「きょうは大勝負だ」「決戦だ」の声が上がる。メディア的な興味も高いのだろう。ピッチサイドにはTVカメラも多数並べられ、いわきからの行きの常磐線車内では「党首」と、広野駅からのタクシーは「徹さん」と一緒になった(笑)。

 試合前。きれいに蘇ったJ村スタジアムを7ヶ月ぶりにながめていると、隣接の広野町サッカー場でのウォームアップを終えたいわきFCの選手たちが通りかかった。その中にDF5按田頼(コンサドーレ札幌U−18出身)がいた。頼、約束通り来てやったぞ!「水曜日も来てくれてたんスか?」馬鹿言え。こちとら仕事持ちだ。きょうだって有給取って来ているんだ。

 たぶん高速道路に乗ると湯本のクラブハウスから片道30分はかからないと思う。自治体は違えどやはり「地元」であるいわきFC。意気は高い。対するお京都も過去の対いわき戦は2戦2勝。だが、今回は違う。お京都は主将であり守備の要であるCBの4内田錬平(コンサドーレ旭川U−15出身)を警告累積で欠いている。試合前、れんぺーくんはいつもとは違いアップウェアを着て、用具を世話したりボール拾いしたり、戦う仲間の練習のお手伝いに回っていた。スタンドから声をかけると「仲間を信じています!」という力強い答え。その表情は硬かった。平日であるにもかかわらず、いわきは前述通り応援するサポーターはたくさん来ている、見るならお京都側。控え室から出てくる選手たちをスタッフや控え選手が一人ひとりタッチで迎える。声もよく出ている。こちらも士気は限りなく、高い。

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 曇り空。10時45分。試合開始。
 序盤から双方遠慮はない。様子見なんてことはしない。開始2分で両方ともシュートを放つ。
 いわきは…この3人のユニットならばJ2でも通じると思われるほど高品質の、10平岡、9赤星、18バスケス・バイロンの強力3トップが前線をじゃんじゃんかき回す。お京都はガーナ人の19サバンも加えて献身的なプレーをする中盤から、ガーナの五輪代表らしいトップの11イブラヒムめがけてくさびを入れるプレーが目立つ。3バックの左CBで188cmのイブラヒムをマークしていたのが183cmの按田だ。ハイ・ボールにはことごとく競り勝ち、グラウンダーのボールであっても相手を自由にはさせない。相当に寒かったので手に汗は握らなかったが、緊張感の高い試合はスコアレスで50分を終える。5分ものアディショナルタイムがあったのは、お京都のGK1三宅がいわき選手との交錯で2度ほど傷み治療を受けたからだった。彼の左太ももには幾重にもテーピングが施された。当然控えのGKもアップを始めていたが、果たして大丈夫だろうか。これが懸念通り後半に影を落とすことになる。

 前半は感覚的に6:4でいわきが押していたように感じた。地元開催、相手の内田の欠場を加味しての評価だ。実質はやはり五分五分なのだろう。

 2日前の決勝ラウンド第1節。いわきは高知ユナイテッドを相手にやはり前半を0−0で折り返した。だがギアを上げた後半はあっと言う間に先制し、光の速さで追加点をも奪い、勝ち点3を挙げている。きょうもそうだった。いわきのシュートを三宅がクリアすると、やはり負傷の影響があったのか、三宅は体勢を立て直せない。続く26増崎のシュートもなんとか防ぐが、こぼれ球を左サイドの大外で待っていたMF8日高大にねじこまれた。均衡が破れる。お京都ゴール裏にカメラを構えていたメディアたちはここぞとばかりにシャッターを切りまくる。歓声がこの日初めて会場を包む。お京都は第1ラウンドを通じ5試合目で初の失点。準優勝した全国社会人大会でも5試合でわずか2失点。後半2分。対いわきでもついに初めての失点を迎えてしまった。
 結局、それが決勝点となった。

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(いわきFC・按田頼)


 ヒーローが日高なら、按田頼くんは守備の立役者となった。1−0のまま時間が経過するにつれ競り合いはヒートアップする。チャンスはいわきの方が多い。スタンド最前列で見ているれんぺーくんがいないお京都DF陣は、精一杯に身体を寄せてシュートミスを誘う。ハイ・ボールの競り合いも激しい。残り15分を切った頃、刹那のプレーで按田とイブラヒムが交錯し、倒れる。主審がイエローカードを手に近づいてくる。按田だったら累積2枚目。「審判がちゃんと見てくれていない」と、試合前にこぼしていた彼もピーンチ!な、場面で、カードが向けられたのはイブラヒムの方だった。彼はその2分後に交代でベンチに下がってしまう。按田が勝った。
 「ひぐまさん、ウチの赤いTシャツ持っていますよね?着てこなかったんですか?」メディア向けインタビューの後、按田がスタンドのひぐまさんを見上げて声を上げる。ああそうだ、バッグの中にいわきFCのTシャツを忍ばせておいた。「昇格決めたら着てやるよ!」明後日は着ていくぞ! でも出られるかな? 彼もまた右足を痛めた。

 2試合合計勝ち点6とし、2位以内に与えられるJFL昇格へ力強く前進を示したいわきFC。彼らの歓喜の瞬間は、ここから3時間後に訪れる。

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 大仁試合(誤字に非ず)。
 対戦カードは高知ユナイテッドFC対福井ユナイテッドという、日本が世界に誇る「ユナイテッド・ダービー」(ウソ)。ともに第1節は敗戦を喫している。
 地決の決勝ラウンドは4チームによるグループ総当りで上位2位までに入らないと未来がない。この時点で2勝のいわきは勝ち点6、おこしやすは3。高知と福井はともに0。生き残る。そのためには互いに勝ち点3を掴まなければならない。

 空模様は明らかに崩れてきた。朝のいわき駅前の時点では好天だったくせに、J村の空は気まぐれなあの娘のようだった。降り注ぐ雨が時間の経過とともに強さを増す。それでも雨粒は細かい。この試合は屋根のないバックスタンドの高知側で見ることにしたひぐまさんだが、雨合羽を着ようか否かを迷う。ってか、そもそも天気を若干甘く見ていた。ひぐまさんは雨合羽も傘すらも持ってきてはいなかった(苦笑)。や〜ね〜www。しかも気温も低い。寒い。
 そんな悪条件でも高知の応援の人数がやけに多い。チームカラーである赤と緑ではない。赤一色の人たちが目立つ。胸には「Walk to the Dream」。いわきFCのサポーターの方々だ。第1節で対戦し、いわきが快勝を収めているため、かつ勝ち点を伸ばしJFL入りに王手をかけていたからその余裕で…と思っていたのだが、実は高知にはいわきFCのOBがいたための友情応援だった。DF23の山下宏輝と,同じくDFの2新田己裕。ゆえに高知U…と言うよりも、最初は彼らを鼓舞しようと、大勢の人々が集まっていたのだろう。太鼓もいわきサポを加えたツイン体勢。慣れない高知チャントのリズムも一度さらえば慣れる。きょう、高知の応援をリードするのはみやっちさんではない。確か第1節はここにいたはずなのに、きょうは姿がない。みやっちさんも当然仕事を持っている。しかも表の顔は経営者だ。本日はどうしても高知に戻らねばならない仕事があり、今夜の夜行バスで明日の早朝にまたJ村まで戻ってくるらしい。高知のコールリーダーは…なんと小柄なご婦人である。その正体は高知Uの運営会社の取締役にして、選手たちの寮の寮母さんなのだ!(本当である)

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 13時半。試合開始。双方とも負けられない試合らしく意欲的に攻めあう。高知がやや優勢のうちに迎えた前半21分。FKからのこぼれ球を、混戦の中、前線に上がっていたDF3藤崎将太が押し込む。高知が先制。33分に不可解なPK(ごめん、トイレに立っていたため見ていないが、高知応援席は誰もが「わからなかった」と語っていた)で同点に追いつかれタイスコアで折り返す。なぁに。どうせ勝負はここからなんだ。
 後半になって一昨日の敗戦からのバウンスバック(立ち直り)を明確に見せたのは高知の方だった。初戦は欠場していたCB5中山和弥(コンサドーレ札幌U−18出身)が福井攻撃陣の前に立ちはだかる。中盤も積極的にセカンドボールを拾い続ける。後半8分。左サイドからのクロスをエース9長尾善公が決め、後半34分にはまたも長尾がグラウンダーのシュートを福井ゴールにお見舞いする。さすがエース!の活躍で差が3−1と広がる。応援席のヴォルテージはさらに上がる。「こーーーちえすしーっ!」スタンド最前列を左へ右へ。ぴょんぴょん跳ねるように寮母さんがいわきサポーターをあおる。応えて雨の中、いわきサポーターも陸上トラックがなく本当に目の前の天然芝のピッチへ熱を送る。時間の経過とともに高知イレブンを強く強く後押しする。

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 対する福井Uに熱意が感じられなかったわけではない。福井ユナイテッドは前年まで活動していたサウルコス福井の運営会社(NPO法人福井にJリーグチームをつくる会)が資金的に運営に行き詰まったため、福井県サッカー協会が中心になって出資者を集め設立された「株式会社福井ユナイテッド」による新チームだ。最悪は解散も…と言われた窮地を乗り切り、新チームとして「地獄の北信越リーグ」を戦い抜いてきた。かつて松本が、長野が、金沢が揉まれてきたリーグだ。ひと月前の10月には福井県代表チームとして国体を戦い、流通経済大学を中心とした選手で固めた茨城県を相手に準優勝にも輝いている。総合力で勝つ。サウルコス時代から数えて8年間で7度目の地決。2度目の決勝ラウンド。アマチュア最高峰のリーグ=JFLを目前にして、「イオンのない県」福井の恐竜たちは、それを手放そうなどとは考えない。
 しかし、高知に傾いた流れを福井は覆せない。福井ユナイテッドで(前身のサウルコス時代から)5年目を迎えていたDF6鶴野太貴(コンサドーレ札幌U−18出身)は後半28分に交代出場した。左サイドバックで攻守のバランスを取ろうと奮闘したが、流れを変えるには至らなかった。
 試合終了。この時点で勝ち点はいわきFCが6、お京都と高知Uが3。福井Uは0で敗退が決定した。JFLへと抜けられる可能性があるのはいわきとお京都、高知の3チームだが、お京都と高知は最終日の第3節で直接対戦するため、両方がいわきに並ぶことはできない。よって、いわきの2位以上がこの瞬間に確定した。常磐高速で30分ほど。湯本は釜の前。いわきFCベースで待機していた選手たちは一斉に歓声を上げた。
 残る椅子はひとつ。京都か。高知か。

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(おこしやす京都・内田錬平)

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(福井ユナイテッド・鶴野太貴)


 高知U恒例の、試合終了後の「サポーター全員へのハイタッチ」。スタンド最前列の(いわきを含むwww)サポーターたちに「次も勝つぞ!」「よっしゃあ!あとひとつ!」などと、高知の選手たち全員が次々に上気しきった声を上げ、我々の手を握り返す。和弥くんの順番がきた。「和弥!次だ次!次!勝てばいいんだ!」「おおおおし!やるぞぉぉぉ!」…思えば札幌ユースのときも、ここまで感情を露にしたことはなかったかなwww。

 う〜ん…そらユースネタやないなぁ。

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やっぱユースネタやわ…で、後編に続く

※2019/12/27一部訂正済み
posted by higuma at 12:22| Comment(0) | スポォツ系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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